君待ち人
私の恋は誰かに心移りすることなく、ずっと凪雲先輩に焦がれ続けている。
前よりもっと膨れ上がった、二回目の恋。
この心の中にはきっと、愛や「好き」がぎゅうぎゅうに詰まっていて、抱えきれないほどの大きさになっているのであろう。
卒業式では、委員会でお世話になった先輩が卒業する姿に涙ぐんでしまい、目元はすっかり赤くなっていた。
緋衣ちゃんと白河くんも、部活でお世話になった先輩との別れにむせび泣いていた。
それぞれが違う道、違う“明日”を選んで、歩いていく。
一生の別れではないけれど、やっぱり哀愁を誘われる。
あぁ、どうしよう。
また涙が溢れそうだ。
ザア……!
急に強風が吹き荒んだ。
胸元まで伸びた茶色い髪を抑えながら、風に押し負けて散っていく桜を視線でなぞる。
春風の暖かさに、包みこまれていくようだった。
「桜ちゃん」
風が止むと同時に、低い声が聞こえてきた。
一瞬、聞き間違いかと思った。