君待ち人
凪雲先輩の温もりを、確かに感じる。
夢なんかじゃない。
これは、本当の本当に、現実だ。
今だけは、抱きしめさせて。どうか拒まないで。
この現実を噛みしめたい。
待ち続けた日々が無駄ではなかったと証明できた今この瞬間を、忘れたくないから。
「……俺も」
耳元に、囁きが甘美に響く。
「俺も、大好きだよ」
心臓が、一瞬静まる。
またひとつ、涙が滴った。
嘘だと疑ってしまいそうなほど、信じ難くて、信じたい告白だった。
凪雲先輩は柔らかく微笑んで、ギュッと抱きしめ返してくれた。
「な、ぐもせんぱ……っ、うぅ……」
「泣き顔より、笑顔を見せてほしいな」
「無理ですよ……嬉しすぎて、涙が止まりません……っ」
凪雲先輩は私から体を離し、私の目尻に溜まる涙を人差し指ですくった。
相も変わらず触れ方が優しくて、また想いが天高く積もる。