君待ち人
「桜ちゃん」
自分でも涙を拭いながら、一拍遅れて返事をする。
凪雲先輩は、ポケットから小さな箱を出した。
「凪雲先輩、これってもしかして……」
「また約束を交わそう」
そっと、その箱を開ける。
箱の中にある物に、太陽の光が注がれた。新たな希望を贈るように、眩く輝く。
ずるいですよ、凪雲先輩。
せっかく泣き止んだのに、また泣いちゃいます。
小さな公園の大きな桜の木の下で、何度も何度も……何度でも、愛しい人と約束する。
朗らかにそよいだ薄紅色の桜と、通い合った二人の想いは、きっと幸せで愛しい未来を切り拓いていく。