君待ち人
「そ、そんなんじゃないよっ」
「あ、そっか。桜には白河くんがいるもんねー」
なんでここで白河くんが出てくるの?
「私は、約束した男の子が好きなんだってば。知ってるでしょ?」
「知ってるー。ごめん、からかってた」
「もう!緋衣ちゃんってば」
緋衣ちゃんのとぼけた笑顔につられて、私もつい笑ってしまった。
何気なく凪雲先輩に視線を戻すと、彼も私を見ているように見えた。
「!」
目が合ったように感じて、咄嗟に目を逸してしまった。
こっち見てた……?
ま、まさかね。違うところを見てたんだよ、きっと。
そうだよね?
目が合うなんて偶然、あるわけがない。
頭ではそう思いながらも、視線をもう一度二階に移すことはできなかった。