君待ち人
桜の木
校舎の裏には、小さな公園がある。大きな桜の木がシンボルだ。
その公園の桜は毎年とても綺麗で。
私は今日も、咲き誇る桜を眺めていた。
視界いっぱいに広がるのは満開の桜と、
誰かを待ち焦がれている、彼の姿。
「さーくら!何見てるの?」
四月。
まだ、ここ、花丘高校に入学して間もない時期。
私・三吉 桜【ミヨシ サクラ】の名前を呼ばれ、声のした方向に視線を移した。
私を呼んだのは、高校に入ってすぐできた友達の、宮元 緋衣【ミヤモト ヒイ】ちゃん。
昼休みだからなのか、やけにポカポカする雰囲気がある教室で、私は緋衣ちゃんと仲良くランチタイム。
緋衣ちゃんの昼食は、今さっき売店で買ってきたパンだ。パンのいい匂いに、お腹がぐうと鳴る。
「あの桜だよ」
「あー、綺麗だもんねぇ」
この教室から見える公園に、どんと立っている、一本の大きな桜の木。
私は幼い頃、その公園で、ある男の子と毎日のように遊んでいた。
懐かしいなぁ。
「緋衣ちゃん、またメロンパン?」
お手製のお弁当を広げながら、緋衣ちゃんがかぶりついているソレに目を留める。