君待ち人
本当は緋衣ちゃんに話してもいいんだけど、なんとなく秘密にしておきたかった。
もしかしたらこの話をして、緋衣ちゃんが放課後一緒に公園に来るかもしれないことが、ちょっと嫌なのかも。
凪雲先輩との待ち人を待つ時間を、誰にも……友達にも邪魔されたくない。
「桜のケチー」
「そう言われても、内緒なものは内緒だよ」
唇を尖らす緋衣ちゃんに微笑みながら、お弁当の中から唐揚げを取って頬張った。
それにしても、私、さっきニヤニヤしてたのかな?
確かにこのノートは嬉しかったけど、ニヤニヤするほど?
表情筋が緩んでるのかな。
私は小さな疑問に首を傾げながら、唐揚げをもう一口食べた。
緋衣ちゃんはまだ気になる様子だけど、もう聞いてこない。
私は口が固いから、内緒と言ったら内緒。
それがわかったのだろう。
「そういえばさー」
「なに?」
「あたし、彼氏できた」