君待ち人
女の子と白河くんの奥の窓から、灰色の空と雨粒がぼんやり見える。
凪雲先輩、もう公園にいるよね。
私も早く行きたいな。
「……ごめん。気持ちは嬉しいけど……俺、好きな奴いるから」
白河くんは申し訳なさそうに眉尻を垂らした。
断られたにもかかわらず、女の子は含み笑いしていた。
「知ってた」とでも言うように。
「そっか。わかった」
泣きたいのを我慢してる。
純粋にすごいな、って語彙力もなく思った。
「ありがとね。返事ちゃんと言ってくれて。すっきりした」
最後に気にしてないと言わんばかりに笑顔を作り、私がいる方とは反対の扉から逃げるように去っていった。
教室を出て行く時に確かに見てしまった。キラキラと滴る、女の子の涙を。
失恋して辛いはずなのに、好きな人の前では笑顔でいたあの女の子の心は、私なんかよりずっとかっこいい。