君待ち人
入りにくい空気の中、私は思い切って扉を開けた。
「!……三吉」
白河くんは目を見開く。
まさか私がいるなんて、思いもしないもんね。
「き、聞くつもりじゃなかったんだけど……」
「わかってる。どうせ忘れ物取りに来たとか、そんなことだろ?」
「そ、そうだけど……なんでわかったの?」
「なんとなく」
わかりやすい作り笑顔を、私に向けた。
振られる方はもちろん辛いけど、振る方もきっと辛いよね。
私ってなんて場違いな人なんだ。忘れ物をした自分を怒鳴ってやりたい。
私は自分の机の中から凪雲先輩のノートを出し、カバンに入れた。
「白河くん、今日部活は?」
「今日は顧問が出張だから休み」
「そっか」
白河くんも今から帰るらしく、下駄箱まで一緒に行くことにした。