君待ち人
「君はバカなの?」
「え!?」
ば、バカ!?
凪雲先輩に初めて悪口を言われ、思考が停止する。
そんな私をよそに、凪雲先輩は傘を持っていない方の手で私からタオルを奪った。私の頭を片手でぐしゃぐしゃと拭く。
凪雲先輩の手のひらは、私のと比べるとやっぱり大きくて、優しくて、温かくて。
ドキドキする私の鼓動は、雨音が大きすぎて聞こえなかった。
「こんなに濡れて……」
「な、凪雲先輩……?」
「寒くない?」
「はい、大丈夫ですよ」
表情をほろこばせると、凪雲先輩は呆れた様子で笑い返してくれた。
私のことで心配してくれたり、こうやって世話を焼いてくれたり、前より確実に親しくなっている気がする。
少しずつ、距離が近くなっているのかな?
「帰る時、俺の傘貸すよ」
「えっ!?いいですよ、そんな!凪雲先輩が濡れちゃいますよ?」
「俺が濡れて帰るより、桜ちゃんが濡れて帰るほうが心配だから」