君待ち人
凪雲先輩の真剣な瞳は、ずるい。見つめられたら、何も反論できなくなってしまう。
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて借りたいと思います」
「素直でよろしい」
渋々頷けば、勢いよく私の髪を拭いた。
私は、凪雲先輩が濡れて帰って、風邪を引いちゃうかもしれないことが心配で仕方ないけど。
私が「借ります」って言うまで、引き下がってくれない気がして。
凪雲先輩はそういう人だから。
私よりすごく優しい人だから。
「天気予報、当たっちゃいましたね」
「午前は晴れてたのにね」
「……雨、降っちゃいましたね」
土砂降りとまではいかないけど、降っちゃった。
降らないようにって、願ったのに。
晴れてたら、その分彼の気持ちが明るくなってくれると思ってたのに。
雨が降ってしまった。しかも、心配をかけてしまった。
願った効果は、午前中までだったのだろうか。