君待ち人
「凪雲先輩見てください、あれ!」
厚い雲が流れ、七色の光が覗く。
あれは、虹だ。
雨の終わりを示唆している。
「綺麗……」
「……晴れたみたいだね」
「はい」
雨はすっかり止み、灰色の空はオレンジを織り交ぜた青色に変わっていく。
ぬかるんだ地面に、影が伸びる。
そっと傘を閉じた。
虹は、明るい道はこっちだよと教えるように、私たちの足元を照らした。
色が、光が、薄くなって消えていく中、私はこっそり横目で彼を見つめる。
凪雲先輩の瞳には、まだ虹が架かっていた。
七色の虹は、瞳の中では確かに輝き続けていたんだ。
約束の男の子も、今、私と同じ景色を見ているのかな。
爽やかに澄んでいく空から、虹が消えかかる。
約束は決して消えないように、拳を強く握り締めた。