君待ち人




私は上半身を起こして、ベットの脇にいる緋衣ちゃんと白河くんに謝った。



「ここまで白河くんが運んでくれたんだよ」


「そうなんだ。ありがとう、白河くん」



力なく微笑む。体がダルくて、思った以上に表情筋を動かせなかった。



「別に」



言い方は愛想悪いが、その中に恥じらいが窺えた。私と緋衣ちゃんは顔を見合わせて小さく失笑した。






「あっ、体育祭は!?」



「もう終わったよ。今は閉会式。あたしと白河くんだけ、ここに残させてもらったの」



そっか、終わっちゃったんだ。ちょっとショック。


午後の部は応援だけだったからまだよかったけど、ちゃんと最後まで応援したかったな。




「桜、熱中症だって。ちゃんと水分補給してた?」


「してたつもりなんだけど……」



あくまで、つもり。

完璧だった、とは言い切れない。


もしかしたら、水分が全然足りてなかったのかもしれない。いや、実際倒れているんだから、絶対足りなかったんだ。もっとこまめに水分を取っておけばよかった。反省、反省。




もう胸の奥で焚かれていた、あの熱さはどこにもない。


あの熱も、熱中症のせい?それとも……。




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