君待ち人
「あたし達もう行くけど、桜は休んでなね」
「うん、ありがと」
上半身を倒しベットに横になると、緋衣ちゃんと白河くんは安心したように保健室を出て行った。
保健室は私一人だけ。
保険医は、怪我を負った生徒がいるらしく、グラウンドに向かったそうだ。
私はもう少しだけ眠っていようかな、ともう一度目を閉じた。
浅い眠りについた時。
ガラッと、保健室の扉が開かれた。
静かな保健室に、ひとつの足音がよく響く。その足音は、私の寝ているベットのそばで停止した。
「……よかった、大丈夫そうだな」
私の目元にかかる前髪を、指先で撫でるようにどかした。
誰……?
この手は、一体の誰の?
「安静にしてなよ」
誰だかわからない。なのに、手が、声が、やけに胸に沁みこむ。深いところまで流れ込んで、落ち着かせてくれる。
温かなひだまりにいるみたいで、心地いい。