君待ち人
手のひら
体育祭が終わってから、数日後。
六月、梅雨の時期になった。
最近はずっと雨が続いている。
「実はあたし、雨って結構好きなんだよね」
昼休みの教室。
いつもの場所で、私と緋衣ちゃんは昼食中。
緋衣ちゃんは気まぐれに雨好き発言を投下した。メロンパンが売り切れていたということで、今日はクリームパンを食べている。
「なんで?」
私は、今日のお弁当の手作りサンドイッチを食べながら、理由を尋ねる。
「あたしにとっての雨ってさ、全部洗い流してくれるイメージなんだよね」
「洗い流す?」
「そ。汚いものも忘れたいものも、ぜーんぶ。だから、好きなんだ」
窓の外、薄暗い空から降り注ぐ雨を横目に、弾んだ声色を激しい雨音に混濁させる。
「私は、嫌いだなぁ」
正反対の意見を、誰に言うわけでもなく呟いた。