君待ち人
初デートについて相談されるなんて、友達としてはなんか嬉しい。そういえば前に、瑛美にも似たような相談をメールでされたっけ。
微笑ましくなって、つい頬がゆるんゆるんにたるんでしまう。
「それで、服ってどんなの着たらいいのかな?」
「どこ行くの?」
「映画なんだけど……」
赤らんでいく耳がやや垂れ下がっているように錯覚する。まるで子犬みたいだ。
私は、ニコニコがマックスな表情を戻そうと、頬に手を添えた。
「映画デートかぁ……。それなら、黒のフレアスカートなんてどう?それに白の可愛いトップスを着て、あとは差し色を付け足して……大人っぽいコーデにするの!」
カバンに入れていた雑誌を取り出し、「こんな感じ」と想像していたコーデを指差した。
緋衣ちゃんはフムフムと何度も頷きながら、熱心に雑誌を凝視している。
彼氏のために可愛くしたい乙女心は、雨で憂鬱だった私の気分を上昇させてくれる。
「なるほど!ありがとう、桜!!」
「どういたしまして」
「桜のおしゃれなセンスを、初デートで活かしてくるよ」
「おしゃれって……そんな、普通だと思うけど。頑張ってね」