あ
ガラガラと立て付けの悪いドアが音をたてる。
社会科資料室。
そこは、担任笹塚の巣だ。
雑然と置かれた資料や本の山。
いつ雪崩れが起きてもおかしくない状態だ。
その山の向こうには、
入ってすぐの雪崩の山からは想像できないほど
綺麗に整えられた場所がある。
テレビにソファ、テーブルに本棚。
私用で持ち込まれた革張りのソファは使い込まれ過ぎて
買ったときの印象とは大分違ってきただろう。
本棚には先生のお気に入りのDVDが並べられている。
「お茶いれる」
笹塚とこうしてお茶をするようになったのは
いつからだったろう?
雑用を頼まれてこなしていく内に
自然にそうなったように思うけど、
結構、不自然な出来事だと今さら気づく。
みんながわいわいとご飯を食べている時に、
こうして整えられた空間で、先生と優雅にお茶を飲む。
日当たりのいいこの部屋はポカポカと暖かく照らされて
天国のようだといつも思う。
ソファに座り込みながら、はぁ、とため息を吐いた。
落ち着く。
この暖かく薄暗い空間は
学校のなかでのあたしの憩いの場所になりつつあった。
「まだちゃんと友達つくれないのか?」
無神経にそんなことを言いながら、
2人分のお茶とお菓子、自分の昼食を持った先生が現れる。
「うん、居心地悪いよー」
わざと間延びした声をだし、少し痛んだ胸を隠した。