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「真冬、一緒にかえろ!」

帰りのHRが終わって元気に駆けてきたのは、
幼なじみの春名朱里。

彼女は天真爛漫、その一言に尽きる。

きゃっきゃとあたしの机の周りで騒いで急かす。


「急いで、急いで!ケーキが逃げる!」


必死な顔で何を言うのか。
立派なすね毛が生えてるケーキを
想像して気持ち悪くなった。

帰り道に付き合わされるのは大抵が食べ物関連のお店だ。

華奢な体におおよそ見合わない量の食べ物を
ぺろりと平らげてみせる大食いさは、
今まで朱里が必死に作り上げた女の子らしくない部分の
ひとつなことをあたしは知ってる。

「準備できたよ、帰ろっか」

うん、と大きく頷いたあと今日行くところはねー、と
無邪気に話し出しながら歩を進め出した朱里を
数人の女子が睨んで笑って馬鹿にしてる所が
教室を出る前に見えた。



「真冬、クラスで友達できた?」

イチゴのショートケーキ、ワンホールを、
もう半分も平らげた朱里が
口の周りをホイップだらけにしながら聞いてきた。

「できないよ、お昼ご飯食べる位の人しかいない」

自重ぎみに笑って答える。

「朱里は?」

「できてない!」

大きな声できっぱりと言う朱里は、まだ諦めてないんだ。

「そっか、あたしはもう朱里がいればいいや」

あたしは諦めたから。
友達を作ること。

大きな目であたしの真意を伺うように覗きこんできた
朱里の顔がやっぱりクリームだらけでむせながら笑った。

    
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