あ
「じゃあ、また明日!」
元気に手を振る朱里が見えて、
やっと家の前に着いていたことに気がついた。
「あ、うん。また明日ね」
朱里の背中はあの日からピンと張られたままだ。
――――――――――――――
「…相川……佐倉………渡辺、欠席4名か。
おし、HR終わりー解散ー」
朝のHR。
先生が出席を取る。
高校生になってから、半年経っただけなのに
もう学校に慣れてだらけきるあたし達高校生は
適応能力がずば抜けてるのかもしれない。
そう思いながら、半年経っても変わらない席で
頬杖をつきながら窓の外を眺める。
解散と、先生が言ってから
一気に騒ぎ出すクラスメイトが羨ましく感じる。
「真冬」
急に自分にかけられた声に、
体がびくっと震えてしまった。
「昨日の宿題やった?写させてくれない?」
顔の前で拝むポーズをした美弥が
上目使いであたしを見る。
「やってきたよー、いいよー」
鞄の中からノートを取り出して渡すと
ありがとう、そう言いながらもう向きを変えて
別の友達のもとに帰っていく美弥は
世渡り上手といえるのだろうか。
窓から見える中庭には、
既にHRを終わらせたクラスの生徒が
思い思いに過ごしている。
授業まであと10分なのに、
あの人たちは大丈夫なんだろうか。
机の中から1限目の教科書を取りだし、
パラパラめくる。
あたしはこの教室にいるのに、いないも同然だ。
楽しそうに話す周りを見ながら
あたしは求められることを、
求めすぎてるのかもしれないと思った。