「授業始めるぞー」

3限目、やっぱり今日も気だるげに
先生はそう言ってから授業を始めた。

「…余談だが、フランシスコ=ザビエルの髪型は…
…キリスト教の……トンスラ……」

先生の声とチョークの音だけが教室に響く。

先生の話を聞いてるのは、この
32人のうち何人なんだろうと少し疑問に思った。


先生の背中。
少しかっこいいと、思う。


腕を動かすと連動して背中の筋肉が分かる。
肩甲骨が動いて、シャツが少し張って形がくっきりとする。
そんなことを思いながら先生の背中を見つめていると

…!

急にくるっとこちらに向き直った先生と目が合う。

数秒見つめあったせいで、変な間ができた。

ごほん、と咳払いしてから目線を教科書に写し、
また授業に戻った先生を可愛いと思った。



あと、1分。

みんなきっと授業よりも時計に釘付けだ。
もうすぐお昼休み。

さっきまで
机に抱きつくようにして眠っていた生徒も
体を起こして今か今かと時計を見つめてる。

机の下でマンガを読んでいた生徒も
やっぱりそれを鞄にしまって、時計に目をやる。

みんながそわそわしだしたのに気づいて、
先生も時計をみる。


「よし、じゃあここまで」


終わりの挨拶をしてから、
みんな友達のもとへと駆け寄り騒がしい
お昼の時間が始まった。

あたしも、美弥たちの元へ向かおうとすると、
教室を出ようとしていた先生と目が合う。


「紺野、ちょっと手伝ってくれ」


先生面した先生の声にあたしは迷うことなく
はい、と言った。



       
< 8 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop