あ
「授業始めるぞー」
3限目、やっぱり今日も気だるげに
先生はそう言ってから授業を始めた。
「…余談だが、フランシスコ=ザビエルの髪型は…
…キリスト教の……トンスラ……」
先生の声とチョークの音だけが教室に響く。
先生の話を聞いてるのは、この
32人のうち何人なんだろうと少し疑問に思った。
先生の背中。
少しかっこいいと、思う。
腕を動かすと連動して背中の筋肉が分かる。
肩甲骨が動いて、シャツが少し張って形がくっきりとする。
そんなことを思いながら先生の背中を見つめていると
…!
急にくるっとこちらに向き直った先生と目が合う。
数秒見つめあったせいで、変な間ができた。
ごほん、と咳払いしてから目線を教科書に写し、
また授業に戻った先生を可愛いと思った。
あと、1分。
みんなきっと授業よりも時計に釘付けだ。
もうすぐお昼休み。
さっきまで
机に抱きつくようにして眠っていた生徒も
体を起こして今か今かと時計を見つめてる。
机の下でマンガを読んでいた生徒も
やっぱりそれを鞄にしまって、時計に目をやる。
みんながそわそわしだしたのに気づいて、
先生も時計をみる。
「よし、じゃあここまで」
終わりの挨拶をしてから、
みんな友達のもとへと駆け寄り騒がしい
お昼の時間が始まった。
あたしも、美弥たちの元へ向かおうとすると、
教室を出ようとしていた先生と目が合う。
「紺野、ちょっと手伝ってくれ」
先生面した先生の声にあたしは迷うことなく
はい、と言った。