「先生?」

「…なんだ?」


社会科資料室のなか、あたしと先生はお茶を飲む。

お茶を飲むだけだったのが、
少し触れあうようになったのはつい昨日のこと。


「今日のお茶、おいしい」


持ち込んだおせんべいを、
バリバリ食べながら先生はそうか?と言った。


「それより、紺野は意外と神経太いな」



ただ単純にあたしの頭には、はてなが浮かんだ。
昨日先生を勘が鈍いと言ったけど、
自分も大概かもしれない。


「担任とキスしたのに、普通だな」

と思って、そう続けた先生は
言葉を濁すようにお茶を飲む。

次いで、あちっと聞こえた時には笑いだしてた。


笑うなよーと言う先生は
舌をだして少しまぬけ面。
外に出して冷ましているのか。


ただ求められたから応えただけ。

これが恋なら違ったのかもしれないけど、
あたしには罪悪感も羞恥心も何もなかった。


「先生こそ、未成年の生徒に手を出しておいて。
目が合うまでは普通だったでしょう?」


まぁ、確かに。

小さく先生が呟いて、あたしを見る。

何も言わずに見つめられるだけで、
なんだか観察されているみたいだった。


ふぅん。


声なのか何なのか良く分からない音を出しながら
先生は納得したみたいだった。


「ねぇ、膝かして」


答えも待たずに、むき出しの膝に先生の頭が乗る。

いわゆる膝枕だ。

まぶたを閉じる先生は少し窮屈そう。


「紺野、お前もっと太ったほうがいいぞ」


デリカシーもなくそう言う先生は
寝心地が悪いのか何度か体制を直してから、
すぅすぅと寝息をたてた。


動けないし、やることがないあたしは
目に入った先生の少しクセのある髪の毛に手を伸ばす。

指先でくるくると遊ぶと柔らかく指に絡まる髪の毛に
また少し、可愛いなと思った。


眠る先生はいつもより幼い。
閉じられたまぶたを縁取る睫毛は、
思っていたよりも長かった。


            
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