僕の初恋
「何それ? 意味わかんないよ」

僕は仙崎が何を言いたいのか本当に意味が分からなかった。

「アタシがこんな風に感じるときは、その人に良くないことが起こんだよ」

マンションが近くなってきたので、仙崎は自転車の速度を落とした。

「それが本当だとしても、キヨノさんは関係ないんじゃないの? 」

仙崎の言ったことを信じたわけじゃないけど、気になったので聞いてみた。

「ちょうど翌日なんだよね。坂本が変な感じになったの」

「翌日って? 」

「ほら例の首狩事件の」



僕が住んでいるのは5階建ての一応鉄筋のマンションだ。

でもエレベーターは付いていないので、自分の部屋がある3階まで階段で上がらないといけない。

階段を上がりながら、さっき仙崎に言われたことを考えていた。

良くないことって何なんだろう?

首狩事件に巻き込まれるってことなのかな?

でも僕は、事件に巻き込まれることはそんなに嫌なことではなかった。

キヨノさんと一緒にいれるなら、それもいいなと思っている。

それどころか、事件巻き込まれることで何かが変わるかもしれないとすら思っていた。

僕は今こうやってがんばっているけど、自分自身を信じきれなくなっていた。

僕は子供のころからゲームが大好きで、大人になったら自分でゲームを作るのが夢だった。

いつか自分が作ったゲームでみんなを感動させたい。

そう思っていた。

だから去年1年間、ゲームクリエイターを養成するための学校に通っていた。

その学校を経営している母体がゲームソフト会社で、毎年その学校から何人もの生徒が採用される。

僕はわりと成績は優秀なほうで、先生も大丈夫だろうと言っていた。

でも実際は採用されなかった。

理由は分からないけど、駄目だった。

だから今年もまたお金を払って同じ学校に通い続けている。

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