僕の初恋



次の日、11時前にピアスの男がコンビニに入ってきた。

考えてみれば、ピアスも最近このぐらいの時間にやってくる。

ピアスは週刊誌を手にとって読み始める。

しばらくして彼女が店に入ってきた。

ピアスは本を手に取ったまま、明らかに彼女のことをなめるように見ている。

いやらしい眼で彼女のことを見るな!

僕は心の中で叫んだ。

彼女はあくまで超然としていて、ピアスが見ていることに気付きもしない。

いつものように食べ物をいくつか手に取るとレジにやってきた。

僕は落ち着かない気持ちで商品のバーコードを読み取っていく。

いつもなら彼女のことが気になるのだが、今日はピアスのことが気になる。

ピアスのほうをチラと見ると、やはり彼女のことを見ている。

「あの・・、いつもありがとうございます」

僕は勇気を出して彼女にそう言った。

「えっ」

彼女はちょっとびっくりしているようだ。

僕は変なピアスの男に注意してもらいたいと思い言葉を続ける。

「このあたり、最近変な人が多いみたいなんで注意してくださいね」

「はぁ」

彼女はけげんな表情で僕のことを見る。

あぁ、これじゃ僕が変なやつだよ。

彼女は会計を済ませると足早に店から出て行った。

そして、ピアスの方を見ると・・。

ピアスは立ち読みしていた本を置いて、彼女の後を追うように店から出て行く。

あっ、あいつ!

「店長ちょっと休憩行ってきます」

僕はそれだけ言うと、服の上にはおっていたコンビニの制服を脱ぎ捨てた。

そしてそのまま彼女とピアスの男を追う。

店を出ると道路の向こう側を歩いている二人が見えた。

ピアスは彼女の後ろをつかず離れずといった感じで歩いている。

あいつやっぱり彼女をつける気だ。

変態ストーカーめ。

僕は彼女を守らなければという気持ちで二人の後を追った。

彼女は人気が無い、暗い路地へと進んでいく。

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