僕の初恋
それなのに好きな男がいるという。

私は、森本の表情が気になって暗がりの中、目をこらした。

しかし、やはり何も見えない。

「大丈夫ですよ。先生に責任を問うつもりはありませんから。むしろ私としては嬉しいんですよ」

私は、ほっとした。

とりあえず自分への責任追及にはなりそうにない。

それだけで十分だった。

「その男はどうしましょう? 」

私は念のため聞いた。

「いや、こちらで処置するので安心してください。もう少し絆(きずな)を深めてからね」

なるほど。

そういう使い方をするのか・・。

「確かに、人は大切なものを失ったときに絶望しますから。よい方法だと思います」

ただ、急激な精神レベルの変動はリバウンドを伴うことがある。

私はそのリスクを理解していたが言うのをやめた。

森本を不機嫌にさせるのが怖かったからだ。

「でしょう。それに私こういうの嫌いじゃないんですよ。キヨノにも最後ぐらいは楽しませてあげたくてね」

森本は嬉しそうに言う。

「しかし・・、彼女の生活すべてを見張るというのでは駄目なのでしょうか? 」

私はいつも思っていた疑問を聞いてみた。

今のような方法では、どうしても不確定要素が付きまとう。

監視していないときに、何が起きているか分からないのだ。

催眠でも、ある程度のコントロールしかできない。
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