僕の初恋



先生はいつもの銀の鈴を取り出した。

ベッドの上にはキヨノちゃんが横たわっている。

先生がキヨノちゃんの前で鈴を鳴らす。

キヨノちゃんには幼いころから、この音色を聞くと催眠状態になるよう暗示がかけてある。

りぃーん、りぃーん。

鈴が鳴ると、キヨノちゃんがぼんやりとし始める。

いつも正気を保とうとするけど、それも長くはもたない。

しばらくすると完全な催眠状態が完成する。

私は、いつものようにキヨノちゃんの手足をマジックテープで固定した。

何かの拍子に暴れださないようにだ。

先生はキヨノちゃんに質問を始めた。

「君は坂本聡という男の子を知っているかい? 」

「ハイ」

彼女が抑揚(よくよう)の無い声でこたえる。

「君と彼の関係は? 」

「友達です」

「君は彼のことが好きなのかな? 」

先生はいつものように淡々と質問を続ける。

「ハイ」

「それは恋愛感情なのかな」

「・・・・・」

やはりキヨノちゃんはこたえない。

こんなことは初めてだ。

「それは恋愛感情なのかな」

先生がもう一度聞く。

「・・・・・」

やはり同じくこたえない。

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