僕の初恋



僕たちは、少し離れた川の土手に陣取って花火をみることにした。

公園の近くはもう人がいっぱいで、座るところが無かったからだ。

ポンッ、ポポンッ。

続けざまに花火が上がる。

久しぶりに見る花火はとてもきれいだった。

「きれいだね」

キヨノさんが空を見上げながら言った。

「うん」

僕も同じ空を見ながらこたえる。

「なんか、こんなに楽しいことってあるだね」

「えっ? 」

「私、生きてても楽しいことなんて無いんじゃないかって思ってたの。でもサトシ君に会って、こうやって一緒に花火が見れて。生きてるといいことってあるんだね」

キヨノさんはそう言って、僕のほうを見てニッコリと笑った。

その言葉を聞いて僕はわかった気がした。

僕たちは似たもの同士だ。

僕も、生きててもいいこと無いって思ってた。

才能や運は持っている人に集まっていて、僕みたいな人間には縁がないものだ。

だから僕の夢はかなわないし、僕の未来には希望は無い。

心の底ではそう疑っていた。

僕はキヨノさんをギュッと抱きしめた。

そして耳元で言った。

「そうだよ。生きてると、いいことって一杯あるよ」

でも、それは自分自身に言ってたのかもしれない・・。
< 59 / 99 >

この作品をシェア

pagetop