僕の初恋
*
僕たちは、少し離れた川の土手に陣取って花火をみることにした。
公園の近くはもう人がいっぱいで、座るところが無かったからだ。
ポンッ、ポポンッ。
続けざまに花火が上がる。
久しぶりに見る花火はとてもきれいだった。
「きれいだね」
キヨノさんが空を見上げながら言った。
「うん」
僕も同じ空を見ながらこたえる。
「なんか、こんなに楽しいことってあるだね」
「えっ? 」
「私、生きてても楽しいことなんて無いんじゃないかって思ってたの。でもサトシ君に会って、こうやって一緒に花火が見れて。生きてるといいことってあるんだね」
キヨノさんはそう言って、僕のほうを見てニッコリと笑った。
その言葉を聞いて僕はわかった気がした。
僕たちは似たもの同士だ。
僕も、生きててもいいこと無いって思ってた。
才能や運は持っている人に集まっていて、僕みたいな人間には縁がないものだ。
だから僕の夢はかなわないし、僕の未来には希望は無い。
心の底ではそう疑っていた。
僕はキヨノさんをギュッと抱きしめた。
そして耳元で言った。
「そうだよ。生きてると、いいことって一杯あるよ」
でも、それは自分自身に言ってたのかもしれない・・。