僕の初恋
キヨノさんが、こんな風なことを言うはずがない・・。
何がなんだか分からないけど、目の前にいるのはどうやら本当に別人のようだ。
「ねぇ、僕がキヨノさんの一番好きなところって分かる? 」
拓なら答えを知っているはずだ。
「何だよ突然?」
「いいから答えてよ」
「そんなの足だろ、あし。だってお前、足フェチじゃん」
こいつ、マジで拓だっ。
じゃ今まで、拓と話していた内容をキヨノさんは知ってるってこと?
僕は、暗い気持ちになった。
「あっ、大丈夫。キヨノはお前がキモオタだって知らないから」
キモオタ・・。
拓は気を使ってくれてるみたいだけど・・。
バンッ。
その時、突然入り口のドアがはじけた。
人がドアと一緒に僕たちの部屋に転がり込んでくる。
守屋だ。
ドアの外からもれる明かりの中に人影がある。
そいつは全身真っ黒だった。
顔にも黒いお面のようなものをかぶっている。
お面が守屋を襲っている?
お面は無造作に室内に入ってくる。
倒れていた守屋は立ち上がり、お面のほうへ向かう。
お面は守屋に向かって手刀(しゅとう)を繰り出す。
見えたのはそこまでだった。
空気を切る音と、手と手が当たる音が鳴り響く。
二人は高速にやり取りをしているようだけど、速すぎてほとんど見えない。
「二人とも・・、逃げてください・・」
守屋が苦しそうな声で言った。
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第十九話へ続く
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