図書館で再会した君を…
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春休み中の図書館は、いつにも増して人が多かった。
座る場所を探すのにも一苦労なくらいに。
席を探していると、二人の利用者が立ち上がって席を後にした。
手にした本を机に置き、椅子に腰かける。
小学生の頃、杏が好んで読んでいたシリーズ物の分厚い本だ。
パラパラと本を開いてみると、意外にも字が細かくて。
小学生だった杏が読んでいた事に、改めて驚かされた。
目次のページを開いた時、隣の空いていた椅子が引かれ、何の気なしに隣に腰かけたその人物を見た俺は、心臓が飛び出すんじゃないかと思うほどに驚いて…。
まさか、こんなタイミングで
まさか、この図書館で杏と会えるだなんて。
杏は、俺がハンカチを拾った事だなんて覚えていないだろう。
しかも、同じ高校に受験していただなんて事すらも。
でも、俺は、杏とのきっかけが欲しかった。
本当は初めましてじゃないけれど、
俺は小さな紙に『はじめまして。』
と書いて、それを杏に差し出した。
…今度こそ、心ごと掴まえてみせる。
fin.