図書館で再会した君を…


息を切らせながら駐輪場に自転車を置き、図書館の入り口にある自動ドアの前に駆け寄った。

いつもなら気にならない事なのに、開くドアがスローモーションの様に遅く感じる。
開ききる前に身を滑り込ませて中に入ると、俺の目の前に走ってくるあの子が目に入ってきて。

心の準備も出来ないままに、俺の横を走り去ろうとするあの子を、慌てて呼び止めた。


『あっの…っ!ねぇ!』


ここにきて、声変わりの始まっていた俺の喉から出た言葉は上擦ってしまい、恥ずかしさを感じずにはいられなかった。

驚き振り返ったあの子に向かって、ポケットから取り出したハンカチを差し出すと…


『わぁ!ありがとう!
すごく気に入ってるハンカチだったから、探してたんだ!
本当に、ありがとう!』


と、目を細めて微笑んだあの子は、深々と俺に頭を下げた後、駐輪場に向かって走って行ってしまった。


明日は、もっとちゃんと話せたらいいな。


そう、思っていたけれど…


まさか、もう会えなくなるだなんて
思いもしなかった。


< 4 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop