図書館で再会した君を…
三年生の夏休み直前。
クラスメイトから告白されて付き合ってはみたけれど、相変わらず俺の気持ちは気後れしたままで。
彼女にしてみれば十分すぎる不安要素だったのかもしれない。
彼女と、図書館で夏休みの課題を済ませた帰り道。
『キス、して。』
と、彼女が今にも泣きだしてしまいそうな表情で俺を見上げていた。
でも、俺には出来なかった。
『ごめん、キミの事好きになれそうにない。』
と、わざと傷付ける言葉を選んで発した俺。
その頬を、彼女は平手打ちした後走って帰って行った。
キスなんて、出来ない。
だって、ドキドキすらしない。
杏のハンカチに唇を押し付けた時のような、
あんな気持ちにはなれないんだ…。
俺は、一体何をしているんだろう。
どうしたいんだろう?
どうすればいいんだろう?
と、自分に質問を投げかけてはみたけれど、答えは出なかった。
出したくなかったのかもしれない…。
平手打ちをされた頬を撫でながらため息をついた。
口の中には、ほんのりとした鉄の味がひろがっていた。