図書館で再会した君を…
―――
――

2月に私立の高校受験を済ませ、既に合格通知も届いていた。
後は、本命校である公立高校の受験だけだ。
自宅から自転車通学が出来る、隣の市の進学校。


その受験日当日。


杏と出会った図書館の近くにある学校。
というだけで、どこかで会えるかもしれないという期待が膨らんでしまう。

教科書を開く受験生がちらほらといる中で、別物の高鳴る鼓動を感じている俺は…


『どんだけバカなんだよ。』


鼻で笑いながら小さく呟いた。
その横を、他校の女子の受験生が二人で走って行った。


『間に合って良かった~!こんな日に寝坊なんかしないでよね!私まで走らなきゃならなくなったじゃん!』


『良い準備運動になって良かったじゃ~ん!後でガッチガチに緊張するんだから、今のうちにリラックスしておかないとさ?』


そんな話が勝手に耳に入ってきて、寝坊するだなんて俺より度胸あるんだなとか、教科書を開いている人もいる中でよく騒いでいられるなとか、そんな事を思っていた。


前を向いて受付に向かおうと歩き出した時。

…聞こえてきたんだ。


『花梨は緊張するくらいが丁度良いと思うけど?』


『言ったな~?杏は緊張しまくりのくせに~!きゃははっ!』


【杏】という名前を呼ぶ声が…。




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