イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「私が言ったのはそう言う意味じゃなくてね……」

突然、私がポケットに忍ばせておいたスマホのアラームがピロリンとなり、奈々子の言葉を遮る。

あっ、バイト。

「あっ、奈々子、ごめん。バイト行かなきゃ!」

出来上がった資料を無造作に近くにあったテーブルの上に置くと、私は鞄を持って慌ただしく教授のオフィスを出る。

「……あの性格一生治らないかもね。久世先輩はあの噛み跡見てどういう反応するかしら?」

奈々子が私のいなくなったオフィスで一人ニヤリと笑ってたなんて私は知らない。

小走りでバイト先に向かい、いつものようにドアを開けて螺旋階段を上ると、久世さんは外国人のお客様を接客中だった。

いつもながら流暢な英語に感心してしまう。

今日の久世さんはカジュアルスタイル。ブルーのシャツにグレーのジャケット、白のパンツという組み合わせは品があって爽やか。ファッション雑誌のお手本のようだ。

モデルやったら売れるだろうな。
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