イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「ははは……お腹が空いてたらしくて、肉と間違われました」

冷や汗を流しながら、私は乾いた笑いを浮かべる。

「……刹那の奴、牽制のつもりか?」

美しい眉をしかめながら、久世さんが呟く。

「え?」

「いいや。何でもないよ。でも、心配だな。この分だと、そのうち本当に食べられるよ。実家に帰った方が……」

「……いえ。私は食べても美味しくないだろうし、大丈夫です」

「いや……桜子ちゃん、そういう意味じゃな……‼」

「久世さん!そう言えば……高校の時、久世さんも旧校舎の図書室によく来てたんですよね?私がうたた寝してるといつも学ランをかけてくれて……」

今、刹那さんに融資を止められては困るのだ。

失礼だとは思ったけど、私は久世さんの言葉を遮った。

「学ラン?……ああ、そう言えば、そんな事があったね」

「飴もありがとうございました。あの飴、すごく美味しかったんですけど、ネットで探してもなかなか見つからなくて……」

「……ああ、あの飴ね。確か……市販はされてないじゃないかな。今度調べておくよ」
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