イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「足が痛いので申し訳ないのですが、これで失礼します」

ペコリと頭を下げ、病室を出ようとすると刹那さんに手を捕まれた。

「勝手に行くな。送ってくから」

「刹那さん達は積もる話もあるでしょうから。私はタクシーで帰ります」

にっこり笑って刹那さんの手を外すと、一歩一歩ゆっくり足を引きずりながら病室を出る。

走ってこの場から逃げ出せないのが悔しい。

逃げ出す?

おかしい。こんなの……いつもの私じゃない。

きっと足が痛くて思うように動かせないからだ。

だからこんなにイライラして辛いんだ。

「……足……痛い」

何故か涙が込み上げてくる。

壁に持たれながらギュッと目を閉じると、突然誰かに身体を抱き上げられた。

フワリと漂うムスクの香り。

刹那さんだ。
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