イジワルな旦那様とかりそめ新婚生活
「はい」

そうだ。バイトに来たんだもん。ちゃんと仕事しなきゃ。

慌てて本の検品に取り掛かる。

本に書かれている目次やプレートリストと照合しながら、一頁一頁抜けがないか確認していく。

やっぱりルドゥーテの絵は手彩飾が綺麗で絵に見いってしまう。

辞書とか、聖書の検品は途中睡魔との戦いになるんだけどね。

睡魔に襲われてどこまでちゃんとページをめくったか覚えてなくて、最初からやり直した事が結構ある。

グーテンベルク聖書なら俄然やる気が出るのになあ。

でも……さすがに億単位の本は触るの怖くてページ捲れないか。

久世さんのこのお店にもグーテンベルク聖書の一葉だけ入荷した事があったみたいだけど、すぐに売れちゃったみたい。滅多に入荷しないし私も一目でも拝んでみたかったなあ。

ひげ文字って見てるだけでも面白いし。

いつもよりじっくり時間をかけて検品を終える。ただでこんなに見れるなんて役得だよね。

「良かった。落丁なかった」

入荷した本の値段を決めるのは久世さんだ。本の仕入値やコンディションで決めてくみたいだけど、私と二つしか変わらないのに久世さん一人で仕入れから販売まで出来ちゃうって凄い。
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