―ある日―
「どうしたんですか?先輩。なんだか眠そう」

「ああ、うん。最近、あまり良く寝てないから」

「…ウワサ、ですか」

一瞬、ほんの一瞬、先輩のまとう空気が止まった。

「やっぱ聞いたんだ。藤沢?」

「はい。ゆりあから」
溜め息を吐いて、頭をかく先輩。

「信じる?」
「……なんとも言えません。私は見て無いですし…話も、今日聞いたばかりなんで」

苦笑。

「……圭くんはさ、昔から、なんか危うくて、いつか、爆発するんじゃないかって……俺、思ってたから、注意してるつもりだったんだけど、なんか……」

すごく痛そうな表情。先輩は本気で……。

「先輩は山本先輩がって思ってるんですか?」

「わかんねぇよ、そんなん。でも、たしかに見たんだ……触った、血、まだ感触は、はっきり残ってんだ」

左手をみつめて、眉を寄せる。唇が震えてる。

「……そっそれって、どれくらい前なんですか」

「…二日」

「学校って、連絡、とか」

「知らない。…そんなの、どうでもいい」

…………。
そっか、なんか、嫌な事聞いちゃった。
そうだよなぁ。考えてみたらすごく嫌だよな、幼馴染みって言ってたし……。

「…悪いっ!そんなつもりじゃなかったんだ。いいや、忘れて!!」

「先輩?」

「だよな、考えてみれば警察とかいないの変だし。俺の見間違い。おじさんの車無いし、ウワサどうり夜逃げだよ、きっと」

「…先輩」

「あと、神隠しとか、都市伝説とかな」

なんか、先輩…。
「そ、ですね。きっとそうですよ」
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