―ある日―
カーテンの隙間から、金に光る月が見ているのが解る。

だいぶ傾いて、

もう、オレンジじゃない。

「………」

机の上の、刺身包丁を見る。

親父の…

死んだ親父の包丁を見る。


「…………」

手に取って、感触を確かめる。

ゴム手越しだけど、確かに、懐かしい感覚。

「……親父」

深く息をして……

なぜだか、

「……………ッ」



動けなくなった。
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