―ある日―
その日はいつもどうりの朝を迎えていた。

いつもどうり父は会社、母はラジオを聴きながら洗い物。
いつもどうりの完全遅刻コース。
「おそよー。ちゃっちゃと食べて、とっとと行きな。片付かないっしょ」
「ウイー」
ごはんとお味噌汁を軽くよそう。
「あっゆかり無い」
「ハイハイ買ってくんのね」

いつもどうりの会話。軽く食べて、軽く支度して、軽く家を出る。
「いってきま」
「行ってらっは」
いつもどうり軽いノリでぴらぴら手をふる母。

いつもどうりだった。何もかも。
ちょっと小高い、丘の上の中学にだらだら向かう。
並木道を見ながら、なんとなく思っていた。


たるいだけだ。


「なんかおきないかなぁ」
小さくボヤく。
好きな人にいきなり告られるとか(いないけど)、友達が実はレズとか、モデルのスカウトされるとか(自信無いけど)、某音楽プロからみそめられるとか(うまくないけど)、演技がみとめられて役者にとか、もういっそストーカーとか痴漢でもいいやっ!


ちょっとでいいから変わった事、起きないかなぁ……。
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