―ある日―
「おはよう、父さん、母さん」

我ながらいい息子風に出来た。

反吐が出る。

「おはよう、圭。朝ご飯は」

いつものテーブルに置かれた金をとる。

「うん、いいよ。ついでに買うから」

この金が今日一日分のオレの飯代。

リビングにはあの男が煙草を吐きながらTVを見ている。

「父さん、いってきます」

「ああ」

…………。

ハッ、相変わらず腐ってんな。

「いってきます」

いい息子風の満面の笑顔を作って言う。

「いってらっしゃい、圭」

そんな事、知らずに多少ぎこちなく笑う母。

いい息子風味が崩れないうちにとっとと家を出た。
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