―ある日―
「付いてきな」

山本先輩はそう言って、柵を離れてゆっくり歩きだした。

な、んて………言った、の?
さっき………
よく聞こえなくて、でも一人になるのは、恐くて、山本先輩を追いかけた。

非常階段を下りてく。
「あ、の先輩」

「何?」

「どこ、行くんですか」

「…そうか」
くるっと急に振り返る。

「学校にジャージとか置いてある?」

「えっ!い、いえ」

「じゃっ替え靴は?」

「…部活、とか入って、ないので」

「なら、靴のサイズ」

「……23.5、です」
何?
一体、何の質問?

それだけ聞いて、どんどん、でもゆっくり下りていく。
なん、だろう………。

着いたのは第一校舎の理科室。
横の蛇口のとこ。

何か……始めるの?

「ここで待ってな」
「…何かあるんですか」

それだけ言って理科室の窓をカンタンに開けた!

「えっ?鍵は」
「この窓だけちょっとコツ掴めば簡単に開く。…昔、教わったんだ」

……なんで溜め息つくの?

そのまま中にするりと入って行ってしまった。
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