―ある日―
…………遅い、先輩。
何か………あったのかな?
…………やだ………恐いよ……

「よっと」
「先輩ッ!」
やっと、戻って来た!
なんか、持ってる?

「なんですか、それ?」

「オレので悪いけど着て」

ジャージ?
上だけ……。

「服、そのままだとマズいだろ」
「あっ……」

私……制服、まんまだったんだ………。
そ………だよね、家帰ったら、だから……。
それに……血………少し、付いてる。

「すみませ、先輩」

「あとコレ」
「?」

靴?

「女子の、かっぱらってきた」

そっか、この靴じゃ、どこにも、行けないもんね……。
でも………いいのかな?

「ありがとう、ございます。先輩」

「……あのさぁ」
「はい」
「その、先輩っての、やめて」

えっ!?でも……

「あの、でも先輩は先輩ですし」

「オレ、君の事、知らないし。なんかかゆい」

「じゃあ、山本、さん?」

「もっと嫌。圭でいいよ」

「あの、だったら」

「ん?」

「私……白井 小夜です。小さい夜で、さよ」

「…いい名前だな。わかった、小夜」

「はい」
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