―ある日―
「やまもと けい?知らない」

まったく聞き覚えの無い名前が、ゆりあの口から出て少し驚いた。

「だよね。あたしもよくは知らないんだけど、写真部の幽霊部員でね、塚先輩の幼馴染みみたい。ホラあの黒髪のジミ~な感じの。覚えて無い?」

黒髪……で?
そういえばいたかも。
「たまに塚先輩と帰ってた?」

「そう!その人みたい」
あれ?でも……、
「それだとオカシくない?一家心中はともかく、行方不明なら夜逃げでしょ?」

「そうなんだよね。だから先輩に言ったんだ、見間違いじゃないですかって。なんだけどたしかに見たって」

「一家心中ならテレビとか来てないの変だし」

「そう!」

ゆりあが言うには、塚先輩はその山本先輩の両親の死体を、山本先輩の自宅に遅いからって迎えに行った時、見たんだそう。
そこに山本先輩はいなかったらしい。

「それだと山本先輩が犯人?」

「になっちゃうじゃん?だから絶対見間違いだって。ニュースとかやってないし。やっぱ夜逃げだよ、行方不明なんだし」

ってもなぁ……、
「今どき、夜逃げもそうないだろうけどね」

「まったくね。っと、早く食べなよ!時間時間」

「そだった」

あわてておにぎりを頬張る。
にしても、変なウワサが流れてんだなぁ。

まっとりあえず、私には関係ないかな。
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