―ある日―
涼しいけれど湿っぽいまだ夏の、夜の空気の中、私達は人気の無い、暗い倉庫街のような場所にいた。

「………」
倉庫と倉庫の間の、狭い空だけど、晴れて、星がキレイ。
マンガとかでしか見た事ないような場所にいるのに、不思議と冷静な頭。

少し、竜彦さんがわかってきた気がする。

……その所為かな?

「小夜?」
「あ、なんでも無いです」

見透かされたようで、少しオオゲサに否定してしまった。

……余計、怪しかったかな。

「いや、良くわかんないけど、これからトラックで移動するんだ」
「トラック?」

うなずく。

「大阪方面に下る」
「大阪…」
「言って無かったから、念の為」

あっ………

「わかりました。ありがとうございます」

ひらりと手を振って、竜彦さんの元へ行く圭さん。

気、使ってくれたんだ。

竜彦さんはと言うと、この狭い倉庫の間の先端にいて、何かを見てる。

道路の方、かな?
その、トラックを待ってるん…だよね?

……………
< 83 / 106 >

この作品をシェア

pagetop