私の親友
その日の放課後。
―――何かが、何かがおかしい気がする。
何だろう?いつからだろう?
帰りのホームルームが終わり、オレンジ色の光が教室に差し込む中、私は机に肘を付いてぼんやりと空を見つめていた。
「……ちゃん、……うちゃん、……レウちゃんってば!!」
「あ?!ああ、ロア、どうした?」
んもー、と可愛い苦笑いを浮かべながらロアが話しかけてきた。
「レウちゃん、今度誕生日でしょ?何がほしい?」
ああ、そっか、私の誕生日だっけ。
すっかり忘れてた。
児童養護施設はほとんど『居場所』ってだけでまともに祝ってもらえなかったし、私を産んだ両親はもう居ないし、クラスメイトからはこの不良っぽい見た目のせいか煙たがられてるし、友人はロアしか居ないから。
「何でもいいよ。ロアが選んでくれるならさ。」
ロアがくれる物は、全部私の好みの物ばかりだから、聞かれてもいつもそう答えてる。
「……」
ロアの顔から、天使のような笑顔が一瞬消えた。
「ロア?」
「やっぱり、レウちゃんは何も分かってないんだね……」
「え?」
何言ってんだ、ロアは?
分かってないって何?
ヒュッ
「うわああっ?!」
ロアの白くて細い腕が、私の胸をすり抜けていった。
「……」
ロアは何事も無かったように腕を引き抜くと、微笑んだ。
「分かった。できるだけレウちゃんの好みに添えるように頑張って選ぶね!
じゃ、私ちょっと準備があるから帰る!バイバーイ♪」
鞄を肩にかけると、ロアはさっさと教室を出てしまった。
―――何だったんだ。