君のいいところ、1つしか思いつかない。
図書室を出て、廊下を歩く。
「あれっ、岸田さん?」
不意に呼ばれた名前に顔を上げると、そこにはサラサラの黒髪。
「三波先生…」
やっぱり…紅いリップが似合うのは大人の人だと思った。
っていうか、この人だと思った。
「蓮…あ、篠宮くん知らない?」
首を傾げる三波先生。
自然と出たような蓮って呼び方とか。
その質問とか。
「何であたしに聞くの?」
「え…」
「先生のが知ってるんじゃないですか」
自分でも驚くくらい、冷たい声だった。