君のいいところ、1つしか思いつかない。




「篠宮くん」







かなり小声のつもりだったのに、私の声は静かすぎる図書室に少し響いた。






「はい」



コトン、とココアの缶をカウンターに置く。


と、本から目を離した篠宮くんは怪訝そうな顔で私を見る。




「…何のつもり」



「私、落ち込んだ時とかいつもココア飲むんだ。
甘くてあったかくて元気になれるよ」





ニッと笑ってみせると、眉間に寄った皺。


「落ち込んでないから」


「本当に?」





その問いかけに少し開いた間が、篠宮くんの本心だと思った。





「昨日はあんな会話聞かせて悪かったよ。
教室で話すのは軽率だった」





そう言って手元の本に視線を戻しながら、




「でもあんたには関係ないから、昨日のことは忘れて」







そこまで言われてしまうとこれ以上何も言えなくなってしまう。


返す言葉を考えても、トップレベルに頭のいい彼に中の下くらいの成績の私の勝ち目なんかなくて。






「…何読んでるの?」





話題を変えてみた。





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