君のいいところ、1つしか思いつかない。
「じゃあ、また明日ね!」
「ばいばい!」
はーちゃんたちと分かれて、図書室に向かう。
「蓮!」
カウンターに蓮の姿を見つけると、よ、って答えてくれる蓮。
「あのね、明日再試なんだ」
「こんなに教えたんだから頑張れよ」
「うん!」
こうやって机ひとつ挟んだ向かいに蓮がいるのも。
蓮の綺麗な右上がりの字を見るのも。
伏し目がちの目を見て睫毛長いなって思うのも。
最後なのかなぁ。
あたしたちは恋人同士でもないわけで、
友達なのかって聞かれてもちょっとわからないわけで、
そんな関係のあたしが勉強を教えてもらえるなんて、ある意味奇跡みたいで。
再試なんかなくても、
あたしがここまでバカじゃなくても、
一緒にいられる理由が欲しいな、なんて思うけど…
そんなこと簡単に、口になんか出せなかった。