君のいいところ、1つしか思いつかない。
「っ、はぁ…」
筋肉をつけるために筋トレくらいはすることがあっても、汗をかくのが嫌いな俺には体力がなくて。
鼓動がうるさくて、息が乱れて、それでも悔しくて篠宮の良いところなんか見せたくなくて。
いつもだったら、とっくにやめてる。
息だって苦しいし、足だって疲れたし、紗月ちゃんが見てるのは俺じゃない。
…けど。
どうしたって、紗月ちゃんに振り向いて欲しくて。
その目に映すのは、俺にして欲しくて。
紗月ちゃんの目に映るには、こうすること以外に思い付かなくて。
「はっ、…はぁ…っ」
残り10秒。
大丈夫だと、思った。