君のいいところ、1つしか思いつかない。





「何してんの?」







その怒りを含んだ低い声に、パッと手を離されて思わず咳き込む。



「はぁ、はぁっ…」




息を整えながら声のした方を見ると、そこにいたのは珍しく息を切らした蓮だった。





「いや、あたしたちは…」
「こいつが先に手出したの!」




蓮に悪く思われたくないからか、あたしを指差す。



「は、何言って…」




「謝れ」




蓮はこっちを見ないで、女の子たちの方を睨む。


「え…?」


「紗月に謝れって言ってんだよ」





こんなに怒った蓮は見たことがなくて。

睨むその目はあたしも怖くて。

女の子たちも泣きそうになっている。






「…っ、行こう」



悔しそうに顔を歪めて、みんなを連れて背を向ける。




「おいっ!」




それを追いかけようとする蓮の腕を、掴んだ。












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