君のいいところ、1つしか思いつかない。
「紗月っ!」
バタバタと足音が聞こえて、息を切らしながら走ってきたのははーちゃんだった。
「大丈夫!?」
「うん、ありがとう」
はーちゃんを心配させたくなくて笑うと、はーちゃんは隣に座った。
「じゃあ俺、そろそろ行くわ」
そう言って立ち上がった蓮にありがとう、と言うと蓮は微笑んでくれた。
そうしてはーちゃんと2人になる。
「晴がさ、あいつらに強く言ってたから多分もう大丈夫だよ」
「え?」
晴が…?
「晴が怒ってるの初めて見た」
「なんで…」
落ち着いたはずの心がまた揺らぐ。
嫌いなんて、言っちゃったのに。
「だから…嫌いなんだよ…」
「え?」
嫌いって、言わなきゃ。
本気になったらダメだから。
でも嫌いって言ってなくちゃ、もう溢れてしまいそうで。
この心の奥にある、ぐちゃぐちゃの感情が、溢れてしまいそうで。
だから必死に嫌いって言い聞かせてた。
窓から見える曇り空は、あたしの頭の中みたいだった。