君のいいところ、1つしか思いつかない。
「いや、何がって…その」
図書室に他の人がいないことを確認して、それでも少し声をひそめる。
「先生…結婚する、って」
そう言うと、その綺麗な瞳が少し揺れたような気がした。
「…結婚間近の彼氏がいることは、知ってた」
「え…」
前にあたしに図書室で勉強を教えてくれていて、三波先生に呼ばれた時に聞いたらしい。
だから、あの後、帰ってこなかったの?
なんて、聞けなかった。
なんて声をかけていいか分からなくて、視線を下げる。
「…いい人だよ、相手。
大手の会社に勤めてるし、優しそうだし」
「蓮も、会ったの?」
「…親同士も仲良いから」
「…そっか」